■和墨と唐墨の製法の差

●現在の和墨と唐墨の製法にどのような「差」があるのでしょうか。

墨は煙煤(スス)と膠(ニカワ)と香料を混ぜ固めて造られます。
和墨と唐墨との大きな違いは、この中の「膠の種類と粘度」と「煤」の配合比率が違うことによっておこります。

和墨は煙煤と高粘度の膠が 10対6
唐墨は煙煤と低粘度の膠が 10対12

つまり和墨は、煙煤(すす)の割合いが多い為に墨のおりが早く、黒味も強いということができる反面、粘度の強い膠(ニカワ)が使用されることから、粘り気も強く感じるということになります。
一方の唐墨は、膠の割合いが多い為に墨のおりが遅く、黒味が出にくいということができる反面、粘度の弱い膠が使用されることから、粘り気が弱く感じるということになります。

 

●和墨か唐墨か

どちらが良いかというと用途上で使い分けることが多い為、どちらかに軍配をあげるのは困難ですが唐墨は日本の気候との不具合からか頻繁に割れるという残念なことがあります。

■膠(ニカワ)

●ニカワ

 ニカワは獣類、魚類などいろいろな動物のコラーゲンという物質を含んでいる骨、皮、腱、結合組織、うろこ、浮袋などの部分から取り出されたゼラチンを主成分とするタンパク質の類です。ニカワはススと練ることによリ、スス粒子がニカワ粒子群の間に入り、一般的によく知られているニカワの接着性によって墨として成形させる役目があります。次にその成形物を乾燥すると、ニカワ液の中の水分はほとんどすべて除かれ、元の乾いた乾燥状態に近いニカワが残ることになります。この状態になったニカワはススを強く接着して普通に見られるあの硬い墨の形を保たせる役目があります。